大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所大法廷 昭和24年(つ)93号 決定 1950年3月06日

主文

本件特別抗告を棄却する。

理由

特別抗告申立人の抗告趣意第一点について。

所論は裁判長の被告人に対する個々の尋問に対する被告人の供述が他の共同被告人に不利益であったにもかかわらず裁判長がその都度当該他の共同被告人に反対訊問するように注意しなかった措置又はその共同被告人又は弁護人に対しその都度現実に反対尋問する機会を与えなかった措置は被告人の証人に対する基本的権利を規定した憲法三七條二項に違反し無効であるというに帰する。しかし同條項は、刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられる権利を有する旨規定しているに過ぎないのであって、所論のような形式や時期までをも規定したと解すべきものではない。そして、記録によれば被告人に尋問の機会は適法に与えられていることを認めることができる。されば論旨は採るを得ない。

同第二点について。

しかし、旧刑訴法上裁判長の被告人に対する尋問は、常に適法な証拠能力を有する証拠書類に基いてしなければならぬという尋問法則を見出すことはできない。のみならずいわゆる旧件につき檢事の聽取書と雖も刑訴応急措置法一二條の條件を具備する限り証拠能力を有することは、原決定の指摘しているとおりであって、また当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一四〇号、同二四年二月九日大法廷判決)。それ故論旨は採用することができない。

よって、本件抗告は理由がないから、旧刑訴四四六條第一項後段に從い主文のとおり決定する。

この決定は裁判官全員の一致した意見によるものである。

(裁判長裁判官 塚崎直義 裁判官 長谷川太一郎 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 霜山精一 裁判官 井上 登 裁判官 栗山 茂 裁判官 真野 毅 裁判官 小谷勝重 裁判官 島 保 裁判官 齋藤悠輔 裁判官 藤田八郎 裁判官 岩松三郎 裁判官 河村又介 裁判官 穂積重遠)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例